
とうとうまた京都に行ってきた。前回行ってから丁度半年ぶりである。今回の旅については一つの重要なミッションがあった。それは「京都バス」さんに、前回私の不手際により心ならずも支払いがかなわなかった乗車料金の一部である160円を納入してくることである。(詳細は前回の記事をご覧ください。)それにしても半年もほったらかしておいて、とは思っていたが京都はそんなにまたすぐ行ける距離ではなかった。費用がバカにならないということもあるが、時期的、時間的にも4月までは多忙であったし5月もかなり混雑しそうなシーズンとみて避けたかった。それに私はここぞとばかりに着物を着て行こうという魂胆があるのでそのために考えることがある。5月だと暑くても袷(あわせ)という裏つきの着物を着なくてはならないのだ。最近はそんなことにこだわる必要はないという考えが広まってきているが、私は意地でこだわることにしている。で、6月になれば単衣(ひとえ)という軽やかなものを着ることができる。京都の5月は多分埼玉より暑いのではないか?袷では行きたくない。それで行くのは6月に入ってからということにした。6月の方が観光客の数も5月よりは少なそうに思えた。
6月5日(水)、晴天に恵まれ私は予定通りに京都への旅路についた。出発時刻は前回と同じ。東京を7:09発ののぞみに乗る。

今回のいでたち

今回の朝食
前回のパンケーキが美味しかったので同じものにしようかとも思っていたのだが、前日スーパーに食料の調達に行った時にこれが目についたので買ってしまった。結果はとても美味しく食べやすかった。
往路の車中、私はいつものように窓の外を眺めていた。写真の一枚くらい撮らなければと思うが私は写真を撮るのが上手ではない。スマホを立ち上げてカメラのボタンを押すまでの間に景色が流れてしまって撮れないのである。そういうアホなことは言わずにすむようなテクニックはきっとあるのだろうが、私は普段からそういう研究をしていないのでいつも「ああ、またダメだったか・・・」と諦めてしまう。それで私は雲をかぶった富士山と浜名湖の端っこではない部分も何とか撮れたが、富士川も安倍川も大井川も全滅であった。多分その前後の景色を記憶していればスマホを立ち上げるのに要する時間を見込んで構えることができるのであろうが私にはそれは無理だった。そして予定通り「のぞみ」は9:21に京都駅に到着した。

雲をかぶった富士山

浜名湖の中ほど

浜名湖の西側
しかしそのあと私はバスの乗り場がわからなくて二十分間も駅周辺をウロウロしてしまった。それは私の利用する予定のバス乗り場は北口にあるのに私が南口に出てしまったからに過ぎないのだが、「もしかしたら反対側か?」と思いつつもなかなか反対側に行ってみる決心がつかなかったのは、反対側に抜ける道がなかなかに遠そうだったからである。(それ以前にもっとしっかりガイドブックを読み込んであればそんな間違いはしなかったであろうにと後から自己嫌悪に陥ることが少なくない)誰かにバス乗り場の正しい場所を聞きたいと思ったが、周囲にいるのはほとんど外国人ばかりだったし駅に属する各ショップや切符売り場のような施設も何だかバス乗り場からは距離が少しあるせいもあってか迷惑と思われそうで聞きにくかった。
そかしやっと南口のバス乗り場(ここをどう探しても私の目的の方面には行けそうもなかった)で日本人のしかも地元民らしい男性を見つけてスマホの画面を見せながら尋ねてみてやっと「やっぱり出口が違っていた」ということがわかった。そして私は連絡通路を探して北口に向かった。5分以上歩いて北口に出たらすぐに乗り場は見つかり、幸い発車5分前の73番京都バス(嵐山方面)に乗車することができた。新幹線を降りてから30分以上もうろうろしたが、そのせいでバスを一本も逃してはいないことがわかってホッとした。
私は10:10初のそのバスで嵐山に向かった。京都駅から嵐山まではバスで40分くらいかかる。こんなに乗っても一律230円というのは大変申し訳なく思う。距離による料金設定にしたほうが稼げるだろうにと言う気がするが、そうすると接客業務が煩雑になったりするというマイナス面の方が大きいのだろうか?ともかくそれで私は無事に半年前に未納だった160円をお支払いすることができた。勿論あの時と同じ運転手さんだったわけではないが、私がスイカでその時の料金を支払った後、事情を話してさらに現金で160円を入れさせて下さいと言ったら「ああそうですか、どうも。」という感じだった。これでともかく私の最重要ミッションは終了した。バスが着いたのは(終点はどこだったのかよくわからない)嵐山の渡月橋北詰であった。(橋のたもと、北側の方ということ。「北詰」があれば「南詰」という部分もある)バスはそこで降りる乗客だけを降ろすと走っていった。

渡月橋北詰バス停近く

川の北側から対岸を望む

道路の反対側は商店街
私はあまり混雑する場所が好きではないので別に嵐山に来たかったわけではないのだが、前に来た時と同じバス会社の同じ路線に乗ってそのあと効率よく日帰り旅を遂行するためにはまず嵐山に来るのが最も都合がいいと思ったのだ。私が降りたそのバス停あたりは川沿いだが嵐山のメインストリートの一部で、土産物屋や飲食店が軒を連ね観光客で賑わっていた。しかし前回の時と異なるのは、前回私の目についたのはほぼほぼ外国人観光客で日本人は探さないとみつからないという感じだったしオエ~ッと言いたくなるような人ごみだったが今回は見たところ全体の40%強が日本の修学旅行生、40%強が外国人観光客、残りの15%くらいが日本人の一般観光客という感じであった。そして全体の人数は前回の三分の一くらいか?大部空間にゆとりがあった。このくらいの感じは56年前に私が中学の修学旅行で来た時と人数的には同じくらいだったかもしれない。当時外国人観光客が全くいなかったかどうかは知らないが、少なくとも私は見かけた記憶はない。それでも川沿いではない、メインストリートの両側に商店が連なっているバス通りでは狭い歩道をひしめき歩く観光客の数はハンパなかった。
ところでその界隈においてもレンタル着物を身にまとった外国人観光客はあちこちに見うけられた。数か月以上前にネットなどで見た光景の中ではレンタル着物の利用客は女性が多かったように思うがこの頃は男性もどんどん着ているし、子供さんが着ているところもよく見かける。もう6月で暑いので浴衣みたいな感じのものを着ている人もいるのはまあいいとして、(私は今まで浴衣は7,8月限定のものと思い込んでいたが、念のため調べてみたら6~9月となっていたので大袈裟かもかもしれないがかなりショックを受けた。6月や9月に浴衣を着ている人を見たことが殆どないせいもある。)「ええっ?」と思ったのは婚礼衣装のようなカップルが川べりを散策しているのを見た時だ。う~ん、着てみたい気持ちはわかるけどそれはスタジオ内で写真を撮るだけにしておいてくれないだろうか?もし本当にその日に結婚したカップルなのだとしても、その姿で外を歩くというのは昔の嫁入り道中以外にはない。神社の敷地内までである。ウェディングドレスだって教会やパーティー会場の外では来て歩かないだろう。レンタル業者さん、最低限のTPOは教えてあげて下さいな。と思ったのだが後で夫が調べてくれたところによるとあれはレンタル着物店のサービスで、婚礼衣装姿で戸外で写真をとってくれるというのがあるそうである。そうなのか、とわかっても私は頭が固いのでやはり違和感を拭いきれない。まあ少なくても商売のために観光客にそこまでサービスをしてくれる国って日本以外にはないだろうな。あ、韓国ではもしかしたらやっているかも・・・。
さてその時はまだ11時ごろだったが私はまず飲食店が混まないうちに昼食をとっておこうと考えていた。そしてガイドブックで見つけておいた「中川発明堂」という風変わりな名前のお店を探した。距離的には嵐山の駅から遠くはなさそうだったがメインストリートの歩道があまりにも混雑しているのでそこから右に折れる横道を探すのがちょっと大変だった。
「ここかな?」と折れて進んでみては「違うな」と戻り、を三回くらい繰り返した。ようやく正しい道に入ったがそこはかなり通行人が少ないがしばらくレンタル着物屋さんが続いていてそれが途切れてしばらく行った先にふいに出現した。とてもお洒落な雰囲気のカフェで距離的にはそう遠くないが「町はずれ」のような感じのする場所にあった。
私がその店に着いたのは11:15ごろでまだ開店間もない時刻だったからであろうし繁華街から少し外れた位置にあって通り沿いではあるがやや引っ込んだ位置に入り口があったので(店の前に車が3台くらい停められる感じ)通りすがりの人の目に留まりにくいのかもしれないが私の他にはまだお客が一人もいなかった。しかも約一時間後に私がその店を出るまでに入ってきたのはドリンクをテイクアウトして出て行った女性二名だけで、ほぼ私の貸し切り状態だった。店内はそう狭いわけでもなく20名くらい着席できそうだった。


そして前述したとおりとてもお洒落な雰囲気のカフェで洋風のしつらえであったがメニューはちょっと独特だった。食事は和風のライスバーガーが主で、ドリンクやデザートも和風であった。バーガーを具体的に言うとだし巻き卵や厚揚げの煮たものと漬物を挟んだライスバーガーである。薄い焼きおにぎり二枚の間に具材が挟んである感じ。しかしお洒落な盛り付けで、味は薄めだがしっとりと味わい深く価格もそれらに見合うだけお洒落であった。当節においてはリーズナブルと言える価格であろうか、バーガーが700円でドリンクが500円であった。まあこれが一番安いものだったのだが・・。

ドリンクはアイスカフェオレ
私が事前にこの店をマークしておいたのはほかに私の昼食としてふさわしい食べ物がそのガイドブックの中から見つからなかったからである。本の中ではうんざりするほど沢山の飲食店が紹介されていたが、場所的に行けそうで量的に食べられそうで質的にも問題ない(ソースやクリームを飛び散らかす心配がなく私の歯を破壊する心配もない)もので店がすごく混んでいそうではないところはなかなか見つからなかった。そして食事量としてはちょっと軽めな感じではあったがこんなに混雑する観光地において奇跡的に静かな落ち着いたロマンティックな環境でのランチタイムを過ごすことが出来て私は満足であった。そして私がその店を出たのは11:50ごろだったが、そのあとは先ほどのバス停の反対側から京都駅行き12:36のバスに乗る予定であったのでそれまでどこかで時間を潰そうと思った。
あまり歩き回らなくてもこの近辺でいいだろうと思って私はまず嵐山駅付近まで戻り、渡月橋を渡って橋の南側にある公園のような場所に行った。気温は多分30℃手前くらい、湿度はそれほどでもない感じだったが日差しはそこそこ強かった。ベンチはそう沢山はなかったがそのあたりはそう混み合っているわけではなかったので、私は50㎝くらいの高さの石(植え込みを囲っているような石)の上に腰を下ろしてしばらく周囲を眺めていることにした。木陰に半分でも体が入っていればかなりしのぎやすかった。鳩たちが何羽かいてポッポッと飛び歩いていた。別にエサなどを与えたわけではなく私はただそれらを眺めていた。鳩の写真を撮ってみたがあまりはっきりしなかった。この地面の模様は何だろう?と不思議だったが後から木漏れ日だ!と気が付いた。

渡月橋南側の公園から川の方を眺める

木漏れ日の中の鳩
その場所に12:15ごろまでいた後にまた橋を渡ってバス停付近に戻った。京都駅に向かうバスの停留所側には商店が並んでいるが、反対側は川べりで松の木が植わっていたりする。公園と言うほどの広さではないが腰を下ろせる場所もたまにはあるという感じだ。でもこのあたりは写真の撮影スポットでありけっこう人がいた。それで私はある大きな松の木の下に立ってバス停の方などを眺めていた。
そうしたら急に人に話しかけられたじろいでしまった。30代か40代の女性二人組が韓国語で「一緒に写真を撮らせていただけませんか?」と言った。言葉は全部わかったのだが突然でたじろいでしまったので一瞬意識が宙に浮き、理解するのに1~2秒かかった。全く差支えなかったので了承して撮ってもらったが言葉が通じないと思われたのかスマホの翻訳で「かわいい」とかの言葉を示して見せてくれたりした。私はなんだか「わかりました」とか「ありがとうございます」とかトンチンカンなタイミングで答えていた。そのくらいの韓国語ならとっさに口をついて出るのだが通じなかったかな?「おきをつけて」と言って別れた。
やがて12:36のバスが来て私は京都駅に戻った。そして私はそのあと午後の予定として清水寺に行ってみようと考えていた。大変混雑していることはわかっていたが、一度そういう人ごみも体験し話のネタに外国人観光客集団を見てみよう、距離的には近いので日帰りの午後のスケジュールとしては丁度いいと思った。しかし京都駅から清水寺方面に向かうバスはものすごく混んでいた。ちゃんと降りられるだろうかと心配になったくらいだが、まあこのバスに乗る人はほとんどが清水寺に向かうのだろうから大丈夫だろうと考えた。そしてバスは20分くらいで清水坂のふもとに着き、無事に降りることができた。
ところで私は56年前に中学校の修学旅行で京都を訪れていてその際清水寺にも来ているはずなのだが、清水の舞台に立ったことは何となく覚えているがその前後の記憶が全くない。だから清水寺に登るまでの道があんなに長い坂道だったなんて思い及ばなかった。清水坂といえば一寸法師の童謡の文句が真っ先に頭に浮かぶ。
「さても帰りの清水坂に鬼が一匹現れ出でて・・・」
ということは三条の大臣殿の姫はこの坂をご自身で上り下りなさったのだろうか?それとも輿に乗られていたのだろうか?牛車じゃ無理だろうな・・・なんて考えてしまう。このたびは人ごみが幸いして大股で歩くことはもともと難しいこともあり私は杖を突いて歩幅10センチでヨチヨチと登って行ったが70歳の老体にはきつかった。(杖は時々邪魔になるので折り畳みのものを出したり畳んだりを繰り返していた。)修学旅行の時のこの部分の記憶がないということは、14歳の時にはこのくらいの運動はなんでもなかったということか。
それにしても外国人客のかなり多くがレンタル着物姿で登っているのには驚いた。平らな場所でならわかるが、日本人はわざわざこのような場所に普段気慣れていない着物を来てこようとは思わない。私はあえて頑張って着て来ちゃっているのだがここまで長い坂だとわかっていたら目的地を変更したかもしれない。嵐山の渡月橋付近ならぶらぶら散策するだけでいいから差し支えないが初めて着物を着る皆さんは大変じゃないのか?清水坂のふもとにわざわざレンタル着物屋さんが林立しているというのも謎である。ほとんどの方が私よりずっとお若いから体力的に問題なしということだろうか。
それともう一つ理解不能だったのは外国人観光客の中に大きなスーツケースを引きながら登っている人がかなりいたことだ。普通そういう物はホテルに置いておくものではないか?こんなに混雑しているのだから周囲の人々にとってはぶつかりそうで怖いし。しかし、後で娘にそのことを話してみたら、あれは土産物を買ったらすぐに入れられるように持っているんだということであった。私の中学生時代には外国人観光客はほとんど見たことがなかったが16年前の娘の修学旅行の時にはすでに今と似たような状態だったらしい。はぁそういうことかぁ・・・なるほどねぇ・・・だからバスの中にも大きなスーツケースを持った人たちがいるのか。私は「そんなに大荷物があるならタクシーを使えよ!」と思ってしまっていたが・・・。日本人はお土産を買いあさるにしてもそこまでやらないからわからなかった。昔日本人の団体旅行客がパリなどに出かけてブランド品を買いあさる姿が世界の顰蹙をかっていたけれどそれとはちょっと違うよね。あのころはブランド物だから買うという人が多かったわけだけど今は「日本の物なら何でもかんでも」だもんね。日本人はいろいろな商品を開発するのが得意で、それは日本人にとっては当たり前のことなのだが世界的には稀有のことなんですね。
それはさておき清水坂というのは実にハードな場所であった。外国人の方々はきっと皆若くて相当に体力があるらしく、たとえ着物姿でも皆苦も無く登っておられた。私は時間的にはまだまだ大丈夫と思っていたが、体力的な問題で後で何かあっては困るので清水寺の赤い建物が見えたところまで行ってあとは引き返すことにした。そしてそれは多分大正解だった。下りだって私にとっては杖がないとつんのめりそうだった。そして相変わらずの人ごみをかわしながらやっとバス通りに着いた。時刻は14:20ごろであった。


清水寺入り口?ここでギブアップしました~。
停留所に行きバスを待ったがやがて来たバスも混んでいてなかなか乗れなかった。定時にバスが来たとしても満員状態だとドアを開けずに(もちろん降りる人は降ろす)走り去ってしまう。まあ無理に乗り込まれると危険だからそれはわかる。多分大型スーツケースも三台ぐらい乗車していることだろうし・・・。それでそのあと京都駅には行かないバスを二台見送りその次に来た京都駅行きには何とか乗ることができた。が、そのバスも道中停留所で並んでいる人たちを無視して(?)走り去らねばならないことはあった。しかしそのまた先でかなり高齢の女性が一人で待っていたところではちゃんと乗せていた。私も一生懸命場所を詰めた。
バスは14:50ごろに京都駅に着いた。私が乗る帰りの新幹線は16:30発だったので時間はたっぷりある。そして私はとても疲れていたがさりとてどこかの飲食店やカフェなどに入ってお金を使うのは勿体ないしまだ胃袋は飲食を必要としていなかった。水分補給には持参のドリンクがあった。それに今何か食べてしまったら新幹線に乗車してから何かを食べるという楽しみがなくなってしまう。それに京都駅の構内に入ってしまったらタダで休めるところはないぞと思って私はそのあと三十分くらいを京都駅北口駅前バス乗り場付近の木陰の石に腰かけて過ごした。新幹線の乗り場まで行けば待合室があったことは忘れていた。

京都駅北口の植え込みの縁石に腰かけて休んでいる。
少し暑い日ではあったが湿気はそこまで多くはなかったので嵐山でバスを待っていた時と同様にちょっと頭の上に木の枝が差し掛かっているくらいの場所であれば十分楽に過ごせた。それでも疲れることはかなり疲れていた。足が痛いとかではなくて全身で疲れている感じで動きたくなかった。そして15:30分ごろにやっと京都駅構内に入り、商業施設の多い南口(八条口)の方に行った。「でもやっぱりタダで座れるところってないよねえー」と思いながらしばらくさまよっていたが、朝来た時に見かけて後で帰りに寄ってみようと思っていた大きな土産物屋兼食料品店があったのでそこに入ってみた。するとそこはクーラーが効いていてそのおかげでとても気分が良くなり疲れを忘れて乗車時刻近くまでを過ごすことができた。(Harves京都店)
私はそこで「大阪ずし」のパックを夕食用に購入した。新幹線の乗り場近くで駅弁を買うよりはかなり安く済んだ。それとスナック菓子の「カール」があったので娘への土産に買った。二、三日前に「このごろはもう関東地方より東ではカールが販売されていないんだ」という話をしたばかりだったので 買ってみたのだがこれにはもう娘は大喜びをしてくれた。そんなに好きだとは知らなかった!まるで日本の菓子を外国に土産に持っていった場合のようだった。「開けるのが勿体ない」といって半月たってもまだ未開封である。それと、別に京都特産でもないと思うし高価なものでもなかったが他では見たことのないアンチョビ入りのチーズがあったので夫の酒のつまみ用に一つ購入した。私が買う観光土産はいつもこんなものである。清水坂を大型スーツケースを引いて登る人たちに対して理解ができなかったのも無理ないだろう。

帰路の楽しみだったのですが・・・。

お土産はこれだけです。
16:00ごろ私は新幹線乗り場に向かった。ここでようやく待合室というものがあったことを思い出し、そこに行って出発十分前くらいまでを過ごすことにした。ヤレヤレ、たいして動き回ったわけでもないのに疲れた疲れた・・・。この後は本日最後の楽しみ、乗車後の早めの夕食・・・
ところが予想外の展開になった。私は窓際であるE席を予約していたのだが、その隣で通路側であるD席には私が乗車したときすでに先客がいた。これは不思議でも何でもない。京都始発の列車ではないのだから。しかし迂闊にも想定外だったのは、その方が多分出張中とかのビジネスマンで、まさに今パソコンを開いて絶賛お仕事中だったのである!うわっ!!こりゃ食べにくいじゃないかぁ・・・。これはもう不運だっただけでどちらが悪いわけでもなく仕方のないことだったのだが、とりあえずお仕事を中断していただいて、わざわざ席を立っていただいて、奥の席に入れていただいた。しかしそれで終わるわけではない。私は食事をしなくてはならない。「食事してもいいですか?」って聞くのもなんだなぁ・・・本当は嫌でもダメとは言えないではないか。それで私は心の中では思い切り遠慮しながらも、何も言わずに「大阪ずし」とペットボトルのお茶を出して食べ始めた。韓国人が目上の人とお酒を飲む時のようにできるだけ横を向いて食べた。それでも「うわっ!何なんだ、このクソババァ?!」という空気はひしひしと感じられた。でも仕方ないじゃありませんか。確かにまだ夕食には早い時間ですけどね、私は疲れていてエネルギー補給をしなくてはならないんですよ。それに今食べておかないと帰宅して落ち着ける夜の9時まですきっ腹でいなくちゃならないんですよ。
私だって同じに料金をはらってこの席をゲットしているのだからいかにその方のお仕事が重要でもしかしたら社運のかかっているものであるかもしれないが乗客と言う立場としては同格なはずだ、と思いながらも流石にその状況で寿司を完食するほどの図太さは私にはなく、私は三分の一くらい食べたところで中断してそれを片づけた。あとは家に帰ってからのお楽しみとすることにした。そのビジネスマンの方は一時間くらいするとお仕事を中断して仮眠をなさっていたが、私は流石にもう続きを食べようとかはせず、お休みのお邪魔をしないように窓に下がっていたブラインドも上げずに静かにしていた。
しかし今回のようなことは今後も絶対にないとは言い切れないので、そういう場合に備えて食事のほかに おやつも持参しておいた方がいいなと考えた。食事としての弁当とかではなくて、ドーナツとかコーヒーとか紅茶とか程度の物なら目立たずにというか、そうひどく存在感を主張せずに食べることができるだろう。
そんな感じであとは予定通りに18:45に東京駅に到着した。しかしむしろこの後が最後の難関と言うべきか・・・。上野東京ラインに乗ろうとしたが激混みで乗れず、京浜東北線で大宮まで帰ったが浦和あたりまで座れなかった。まあ平日のラッシュアワーだから仕方がない。土日祝日に出かけると新幹線が混むが、平日だと在来線が混む。ちょっと悩ましいところである。
翌日の話である。前日清水寺にかなりエネルギーを吸い取られてしまったせいで一日中体に全く力が入らなかった。どこかが痛いということはないのだが、ただ力が出なかった。で、更に次の日になると体はいつも通りになった。しかしおかしなことに、その日になってから少しだけ筋肉痛が現れた。右のふくらはぎにちょっとだけ、であるが。着物を着て動いた時の疲れ方というのは活動的な服で動いた時とはかなり違う。何だか体の一部に筋肉痛がきたりすることは少なくて、疲労は体全体に分散されるようなそんな感じがする。
【完】
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