アンナミラーズ狂想曲

エッセイ

            【7月27日(水)】

 7月8日に長蛇の行列にびっくりして一度退散してきてしまったアンナ・ミラーズに、7月27日(水)に再度挑戦して参りました。6:00ごろに家を出て7:40ごろ店舗に到着しましたが、開店時刻は9:00なので当然まだシャッターなどは閉まっていてしかも開店を待って並んでいるような人も全くいませんでした。てっきりもう何人かは並んでいるのではないかと思っていた私は拍子抜けして「ひょっとして今日は休みなのか?」と思ってしまったくらいでしたがネットで調べてみてもそういう情報はないので、いや、ただ時間がまだ早いだけだろうと考えて、ちょっとどこかで待ち時間用のエネルギー補給に何か買ってこようと品川駅まで戻りました。自販機でジュースを買ってもよかったのですが近くに自販機が全く見当たらなかったので駅構内のコンビニに行くしかありませんでした。そしてそこでチューブ入りの桃のゼリーを買ってきました。

 そして7:50ごろアンナ・ミラーズに戻ってくるともう2名(実はそれぞれにお連れさんが離れたところにいたので正確には2組)の方々が並んでおられました。そしてそれからはどんどん人が集まってきて、8:10で20人ほど。8:30で30人ほどになりました。

 8:35に整理券が配られ始めました。私の前の人のお連れさんが10mくらい離れたところにいて呼んでも気が付かないのでせっかく並んでいた方が呼びに行ってその場を離れたために私の順番が一つ繰り上がりました。私は彼らを待っていてもよかったのですが係りの方が私に2番の札を渡してしまいました。そして9:00に入店開始となりましたがその時までには50人ほどが並んでいました。それにしてもそこは風が涼しく吹き抜ける場所で気持ちがよくて、待っているのが楽しいくらいでした。ただ一つ不快だったのは私のすぐ後ろに並んだ一人のお爺さんがやたらに話しかけてくることでした。どうでもいい世間話なので私は必要最小限の返答を一~二分行ったあとは知らん顔をすることにしました。一応まだコロナが蔓延しているんですからね。行動制限はなくなったといっても自己責任で蔓延防止に努力しなくてはならないでしょう!!そのお爺さんはわりと近くに住んでいてなんどもここに通っているみたいでした。私より若いのかもしれませんがそういう行動はスマートじゃありませんよね。

 さて席に案内されてメニューを検分すると「ハワイアンプレート」という、珍しくライスの料理があったので、そして値段も安い方だったので頼んでみたら、ご飯の上に二つ目の目玉焼きとスパムが2切れ載っただけの、野菜らしいものは全く添えられていないという日本人の目にははなはだ異様なものでした。色どりにパセリのひとつまみくらい添えてくれてもいいのではないでしょうか?まあ、美味しかったですけどね。醤油が添えられてあったりしてジャパニーズなテイストだけど、何で「ハワイアン」なんだろう?スパムが載っているから?スパムって沖縄っぽくない?ハワイでもよく使われるんでしょうか。

 結局あまりアンナミラーズっぽくない物を食べてきちゃったなあと思いましたが取り合えず気合を入れて並んでアンナ・ミラーズに入るという目的は達成したわけです。でも10:00以降でないとパイは提供されなかったのでそれが心残りでした。10:00まで待てば用意できますよと言われたのですが、ご飯を食べてしまった後に食べるのは私には無理ですから。閉店までまだひと月以上あるのでぜひもう一度くらい出向いて今度はパイも食べてみようと考えました。

              【8月24日(水)】

 そして8月24日(水)に私はまたアンナミラーズに行って参りました。今度は10:00以降に入店するために9:00ごろ到着することを目指そうと考えて前回より少し遅く、7:30ごろ家を出るつもりでいました。しかしちょっと見たいテレビ番組があったために出発を少し遅らせて7:50ごろになってしまいました。

 それから私はその10日ほど前から膝の調子が悪かったので歩くのが非常にゆっくりでした。まあそれで少しくらい遅くなったって大勢にそう影響はあるまいと考えていたのですが甘かったようです。その日アンナミラーズに到着したのは9:50ごろでしたが私の受け取った番号札は179番であり、「入店できるのは午後3:00か4:00ごろだろう。早まる可能性もあるが。ゆっくり映画でも観てきてください。」と言われました。

 私は耳を疑いました。いくら何でもそんなに?しかし確かにもう開店から一時間近くたっているのにその時までに入店できているのは20番台の方々でした。はあ・・・、私は考えました。5時間も6時間も待つ事態になるとは思いも及ばなかった。しかし諦めて帰るのは嫌だ、来られるのはもう最後なのだ。もう後はない。幸い今日は娘が友達と出かけて夜まで帰ってこない予定である。夫は留守番をしてくれている。よし、待ってみようじゃないか。一生に一度くらいこういうことをしてみるのも悪くないだろう。かつて私のバカなミスが原因でミュンヘンの駅近くで11時間をつぶさなければならなかったことがあるがそれよりはマシだし、それ以外にも空港のトランジットで6~7時間待ち、列車の乗り換えで3~4時間待ちということもあった。まあ、大したことではない。夫に夕食の用意をしてやれないかもしれないのは心苦しいが、家に食べるものがないわけじゃなし何とかなるだろう。私にだってたまにはこういうことがあるのよ。いくらいつも時間厳守のまじめで気の小さい人間にだって不測の事態というものは起こりうるのです。

 そこで私はまず夫に連絡しなくてはと思い、人の少ない場所を探しました。人でごった返す品川駅付近から逃れるために電車で一駅戻って高輪ゲートウェイ駅まで行きました。ここの駅は2020年の3月に開業したのですが、その年の7月末、コロナがちょっと落ち着いた?みたいな時に一度見に来たことがあります。下の階がホームで普通に電車が発着していますが上の階がコンコースであるのか、とにかく変わっていました。広くてほとんど何もなくて案内?のロボット君が稼働していました。それとセルフレジで会計をするらしい無人のコンビニがありましたが、そういう慣れないものには近寄らないという性格の私は敬遠してしまいました。あときれいなトイレがあるだけでしたが、その階は風がよく通って涼しくて気持ちがよくて、ビジュアルの点でもすごくカッコいいと思いました。ただボーッと過ごしに来てもいいくらいだと思いました。だからその時も「座るところはあったっけ?」という疑問はありましたがスマホを落ち着いて操作できそうな場所としてそこを選んだのでした。

 しかしなぜかその日はとても蒸し暑くて、腰かける場所はないわけではありませんでしたが日差しもきつくて(ガラス張りのような建物です)とても座っていられませんでした。きっと利用客が 少ないすぎてクーラーを駅全体に効かせておくのはもったいないということになったのでしょう。それでわずかにちゃんとクーラーの効いていたトイレに避難してその中で夫へのメールを送信し終えました。

 そのあとはどうしよう?と考えまして、暑いけれどとりあえず外に出てみました。出てみなくてもわかることですが、駅の周囲は前も後ろも右も左も絶賛工事中!!しかし泉岳寺という名刹があると知ったのでちょっと行ってみました。そして見学するわけでもなくすぐに戻ってきました。見学していいのかどうなのかよくわからない感じの静かな地味なお寺でした。そしてそれからゆっくりゆっくり品川駅方面に戻りました。足に問題がない時なら日陰を探しながら散歩に適した道を回っていくのもいいのですが、今日は余計な事をして足の痛みを誘発することは避けたかったのです。バファリンをのんで神経の暴走を抑えている状態でしたので。

泉岳寺

 さてウィングのビルまで戻った私はアンナ・ミラーズの入店が何番まで進行しているのかを見にいきました。その時は11:00少し前くらいでしたが45番くらいまで進んでいました。そうかあ・・・こんなペースなら16:00までかかってもしょうがないなあ、もしかしたらもっとかかるも・・・。でもまあ、毒を食らわば皿までだ。18:00までには入れるだろう。そう思って私は少し腹ごしらえをしておくべきだと考えました。朝、家で少し食べてきたとはいえ、15:00までだって何もなしでは持ちません。そこで私は近くに和風のカフェを見つけて何か食べることにしました。そしてクリーム白玉あんみつを頼みました。それにしてもいい値段だなあ、と思いましたが今時まあこんなもんだろうとも思いました。たまのことだし・・・。そういえば、と私は気が付きました。あんみつなどというものをお店で食べるのは私は生まれて初めてのことだったのです!市販の缶詰の蜜豆とかは(それでも多分3~4回)食べたことがありますし、小学校時代の給食とか昨年まで働いていた職場の食事にデザートでついてきたあんみつは食べていますがお年寄りのお世話をしながら出来るだけ短時間で掻き込むような状態でしたから数に入れたくはありません。そのことに気が付くとああ、私って随分質実な生活をしてきたんだなあ、お店でパフェを食べたのだって大学生の時に一回、10年前くらいに一回、他に忘れているのがあるとしても一回くらいです。そう考えると何だか鼻の奥がじーんとしてきて・・・、いやいや、こんなところで涙なんてみっともない!いくら美味しいからって・・・。私は必至で涙を押し戻したのですが、実際そのクリームあんみつは素晴らしく美味しいものでした。クリームの味が市販の物とは全然違う気がしました。それに白玉の歯ごたえがかなりしっかりしているのですがそれが本当に私にとって丁度良い軽食になった感じでした。重すぎず軽すぎずくどくもありませんでした。

 そのあと私が何をして過ごしていたかというと、まずウィングの建物の中をいろいろ巡っても見ましたが買いたいものもないし、秋田県のアンテナショップもありましたが、食べてみたいものもないわけではありませんがお値段もいいし買うと荷物になるしでチラ見しただけ。駅の反対側には何があるのかと思っていったみたらアトレがありました。足に問題がなければもっと丁寧に見て回るのですがあまり歩くと後がこわいのでほどほどに。探せばただ休んでいられるベンチなどもあったのでそういうところに10~20分くらいずつ座っていてみたりしながら結局ウィングとアトレのあいだをゆっくり三往復くらいしたように思います。ベンチにあまり長く座っているのも人目がなあ・・とも思いましたがいつも同じ人が見ているわけじゃなし、気にするこっちゃないと割り切ることにしました。

ウィングの中庭にて
ベンチのわきの茂みの針葉樹にこんな実がついていた

 そうしてけっこうそれなりに時間が過ぎていきました。16:00ごろ進み具合を見に行くと140番台ぐらいでした。これは17:00は過ぎるな、と思いました。でも早まるといけないので16:20ごろからは店の前で待っていました。そしてちょうど17:00ごろ入店できました。やっときたよ、とは思いましたが何だか当たり前のような感じもして特に感激のようなものはありませんでした。店の前で人の動きを見ながら待っている方が時間のたつのが早い感じがすると思いました。

 食事は軽くして、出来ればパイを食べていきたいと思っていたので「まだパイはありますか?」と聞いてみたら二種類だけ残っている。でも18:00まで待てばまた新しいのが焼きあがってくる、と言われました。いやいや、18:00までなんて待っていられません。それにその二種類の中に私の食べたかったチェリーパイがあったので迷うことなくそれにしました。そしてあとシェフサラダというのを頼みました。立派な名称のサラダだと思いましたがそれはレタス、トマト、マッシュルーム、オリーブなどの野菜とゆで卵とハム、チーズ少々が盛られたサラダで、アンナ・ミラーズでなくても食べられるな、と思いましたがチェリーパイの邪魔をしないためには一番ふさわしい料理には違いありませんでした。私はチェリーパイが一番好き、ではあるのですがそれは「気分的に」一番魅力を感じるということで、実はわたしはまだここで他のパイを食べたことが一度もないのです。来る機会がそんなになかったのです。だからチェリーパイを食べるのだってたったの二度目でした。食べ歩きをしたりグルメを気取ったりするのってなかなか大変なんですよね。だから今回のこのような「アンナ・ミラーズに入るために7時間待ちをすることになった」などという出来事がなければ私は甘味屋さんでクリームあんみつを食べるなどという経験を一度もすることなく人生を終えることになったのかもしれませんよ。

奥にあるのがチェリーパイ

 アンナミラーズのチェリーパイはチェリーのプリザーブが切り口からこぼれて流れるほどたっぷりと入っていてそれはとても酸味の強い味です。勿論甘みも十分にあります。でももうお別れです。(ネットで購入する方法があるようですがホールで一台買ってしまうと我が家には多すぎると思うので、そのうちまたアンナミラーズがどこかに復活することがあったら是非また訪ねるということを楽しみにしていこうと思います。)さようなら、アンナミラーズ!!またいつかどこかで会えますように。

                    (2022年8月28日) 

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